神鳥の卵 第17話 |
「このまま争われるのでしたら、陛下は私達がお世話をします」 断言された言葉に、スザクとC.C.は表情を強張らせた。 ロイドとセシルは咲世子と共にルルーシュを連れて行くと言っているのだ。 とは言えこの二人も政府の監視を受ける身。 ゼロの居住区だからこうして自由にしていられるが、ここ以外の場所ではそれなりに行動制限を受けている。なにせ悪逆皇帝の協力者。いくら脅されて協力を強いられたとはいっても、その言葉だけで自由になるものではない。 ゼロとナナリー、そしてカグヤと天子といった権力者の口添えがあるから牢から出され研究者という立場に戻れているだけにすぎないのだ。 そんな彼らが今まで通りの生活をしながら、ルルーシュそっくりの赤ん坊の世話などできない。だから、セシルたちは田舎へ引っ込み果実園を営んでいるジェレミアの元へルルーシュを連れて行こうと考えているのだ。 こんな狭い部屋の中ではなく、自然豊かな場所であればルルーシュは問題なくすくすくと成長できるだろう。護衛の問題も、ジェレミア、アーニャ、咲世子がいるのだから何も心配はない。だが、そんな場所へ連れて行かれれば、スザクはルルーシュに会えなくなってしまう。 ゼロが堂々と行ける場所ではないため、たまにある休日に会いに行くしかないが、日帰りでは厳しい場所にあり、連休など取れないだろうゼロは簡単に会いに行けない。 C.C.の場合は、喧嘩両成敗という考えからあの忠臣と元ラウンズが全力で追い出しにかかるだろう。「枢木と共に来なければ、敷地に入ることは許さない」というジェレミアの姿が思い浮かぶ。 それは嫌だ。 「ルルーシュは僕の所に来てくれたんだ。絶対に手放さない」 僕のために戻ってきてくれたんだから僕のものだ。 それを奪うのであれば、誰であれ容赦はしない。 殺意を滲ませ、セブンであった頃の険しい表情となったスザクに、セシルは困ったような、悲しそうな表情をした。 それを見て、C.C.はすかさずスザクの頭にゲンコツを落とす。 「っ!痛いな!何するんだ!」 「何するんだじゃないだろう。おまえ状況を解っているのか?お前がそんな態度を取れば、本気でルルーシュを連れて行かれるぞ」 スザクをじろりと睨みつけたC.C.はセシルに向き直った。 「今後、意思疎通が完璧なのはどちらか、なんてくだらない言い合いはしない。ルルーシュを巻き込んだ喧嘩もしないと誓おう」 C.C.の誓いにセシルは頷いた後、スザクを見た。 考えは変えないと、険しい表情で睨みつけているスザクに、C.C.は息を吐いた後、肘でその脇腹を小突いた。不愉快げに睨んでくるので、馬鹿かお前と呆れた。 「お前は、ルルーシュと別れたいらしいな」 「違う、僕は!」 「セシルの話を聞いていたか?お前のところに来たかどうかは別問題だ。今問題になっているのは、体力馬鹿と不死身の私が、赤ん坊のルルーシュを巻き込んで喧嘩をしていることだ。その結果、ルルーシュが死にかねないとセシルは言っている」 だから、安全な場所へルルーシュを移すという話が出ているんだ。 スザクはC.C.を睨みつけた後、解っているよと息を吐いた。 そしてセシルに頭を下げた。 「今後ルルーシュの前では喧嘩はしないようにします。ですからルルーシュを連れて行かないでください」 絶対に喧嘩をしない、というのはこの二人には無理だろう。 だが、こうしてルルーシュを引き離す可能性を提示したのだから、もう少し考えて行動するはずだと、セシルは頷いた。 「次はありませんからね、ふたりとも」 セシルはようやく二人にルルーシュとの面会を許可した。 |